【小説】変身(カフカ)
オススメ度★★★★★★★★☆☆(8/10)
フランツ・カフカの小説
ある朝目覚めると1匹の虫に変わっていた男とその家族の顚末を描く物語。
100ページほどで文章も平易で2〜3時間あれば読めます。
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【ポイント】
・作者の感情は排除され、淡々と事実のみが伝え進められる
・主人公視点から見ると、暗く陰鬱で救いも何もなく終焉のみがある物語
→家族視点から見ると、少しは気づきや成長があるが、主人公は突然降りかかった不幸になすすべなく、ただただすり潰される。
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色々な解釈があると思いますが、僕が受け取った印象としては、不幸になすすべなく潰される無力感。虚しさ侘しさを強く感じました。
小説を介して普段感じることができないこの感情を得れただけで非常に読む価値があると思います。
映画「ミリオンダラーベイビー」でも似たような感覚を受けたので、無力感、虚しさ、侘しさを感じてみたい人にはこちらもオススメです。
また、他に考えさせられるポイントとしては下記もあると思いました。
・家族(主に父)との確執
・家族の変身(内面)
・変身が虫で無かったらどうなのか
この辺りも気になれば読んでみてください。
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【小説】津軽(太宰治)
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)
太宰治の自伝小説&紀行文
大人になり自身の故郷である津軽に数十年ぶりに訪問し、昔の知人を頼りに旅行していく様が描かれます。
昨年、津軽に旅行に行き、太宰の生家に訪問し、興味が湧いたので読みました。
実際に行ったところが描写されているのを読むのは楽しいです。
【ポイント】
・太宰治が1番心身共に健康だった頃の作品。明るく前向きな描写も多いです。
→根暗だがお調子者な太宰はうかれて色々と失敗します
・社会的に不適合かつ未熟な人間であることを自覚しているが治せない。
→作中でも毎回反省するのですが、どうしても治すことができないのです。後年、このような気持ちとの折り合いをつけることができず自殺を重ねます。
・作中で心の友と呼べる人間のことを紹介するが、全て過去に自分の家に仕えた者たち。
→太宰の人間としての社会性のなさ。過去に世話を焼いてくれた人しか友と呼べない孤独を垣間見ることができます。
【なぜ面白いのか】
・自分もダメ人間で共感できるから
・自分よりさらにダメな太宰の様子を見て安心できるから(自分より下がいるのだという安心感)
【本文の抜粋】
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けれども私は、弘前市を説明するに当って、それだけでは、どうしても不服なのである。それゆえ、あれこれと年少の頃の記憶をたどり、何か一つ、弘前の面目を躍如たらしむるものを描写したかったのであるが、どれもこれも、たわいの無い思い出ばかりで、うまくゆかず、とうとう自分にも思いがけなかったひどい悪口など出て来て、作者自ら途方に暮れるばかりである。
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全編を通じてこのような塩梅です。
上記は弘前市を自慢したいのだが、どうしてもケチをつけてしまう自分に落胆するさま
この文章を見て共感出来る人は楽しくすらすらと読めると思います(端的にいうと根暗な人)
太宰は社会に馴染めない、人間的に未熟だと思う人々の代弁者なのです。
恐らく人間失格とか斜陽を読んでから読むのが良い作品だと思いますが、太宰の人間性に共感できるならば、是非読んでおきたい作品だと思います。
【太宰の生家】
【金木の町の一角】
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【エッセイ】コーランを知っていますか(阿刀田高)
オススメ度:★★★★★★★★★☆(9/10)
阿刀田高のエッセイ
イスラム教という宗教に興味を持った際はまずこれを読むと概要が楽しく掴めます。
ユーモア、知識を節々から感じられ、こんな文章を書ける人間になりたいなぁと思いました。
【ポイント】
・アラーを唯一絶対の神と崇める一神教
・人間は死後、最後の審判の日に復活させられ裁きを受ける。その際に帳簿につけられた生前の善行と悪業が秤られ、天国と地獄に分けられる。
・コーランは人々の行動を厳格に定めている法律のような側面もある
・一方で聖書などとは違い、詩のような表現で記述されている
→ストーリー性は薄く、祈る際の言葉のリズムが大切
→キリストもアブラハムも預言者だがマホメットが最も正しく以後は預言者は現れない
・マホメットは戦士であり政治家でもあった
→殺戮や奴隷活用など他の宗教の教祖とは異なる側面が
・イスラム教徒以外との関わりを強く拒絶
全世界の人口の20%はイスラム教徒らしいです。
厳粛なルールを守りながらの信仰は人々に自信を与え、幸福に導いてきただろうなと思いました。
一方で他民族を受け付けない厳しいスタイルは多様化した現代では生きづらく苦しい面も多いだろうなと思います(だからこそ生きがいを感じれるのかもしれませんが)
信念を貫くとか媚びない信仰は尊敬ができます。
次はユダヤ教についての本も読んでみたいです。
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【書籍】13歳からのアート思考
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)
美術館に訪れるものの作品を見るのはせいぜい数秒。すかさず作品に添えられた題名や制作年、解説などを読んでなんとなく納得した気になっている。
美術館に行く人の大半は上記に該当するのではないでしょうか。
そんな人達に向けてアートへの向き合い方を提示してくれる1冊です。
タイトルに13歳と書いていますが、大人こそ読むべき内容だと思います。
【要約】
⑴アート思考
・自分の内側にある興味をもとに自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探究をし続けること
⑵アートの歴史
・アートは大別すると2つの時代に分けられる
→カメラの登場前とその後(20世紀が分岐点)
・カメラ登場以前は「写実的な表現」がゴール
→どれだけリアルな絵が描けるかどうか
・カメラ登場により「写実的な表現」は達成され、アートは意味を失う
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アートの新たな価値の探究が始まる
①目に映る通りに世界を描くことから解放される(マティス、ピカソ)
②具体物を描くことから解放される(カンディンスキー)
③アートが美しいものであることからの解放(デュシャン)
④アートがなんらかのイメージだということからの解放(ポロック)
⑤アートとアート以外のものとの境界がなくなる(アンディ・ウォーホル)
アートの領域が拡大していく歴史を代表的アーティストと作品をもとに解説しており非常に面白かったです。
4〜5時間で読めますし、読み始めたら止まらないです。
読んでおいて損はない一冊です。
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【書籍】まんが図解 まるかじり!資本論
オススメ度:★★★★☆☆☆☆☆☆(4/10)
まんが図解と書いておきながら、漫画はほとんどないのでご注意ください。
3〜4時間あれば読めるので、資本論とはどのようなものか目次レベルで知りたい人にはちょうど良いと思います。
・資本主義はイギリスで発生
→資本と国家の協業により
・労働者は資本家に搾取されている
→不払労働の分だけ労働者が損をしている
・労働者の質はどんどん下がり、労働の効率は上がっていく
・出来高主義は資本家にとって最も都合が良い(出来高の基準を自由に設定し、ピンハネの割合を調整できる)
・資本主義は今後も更に拡大し、貧富の差が拡大する
・最終的には資本家と労働者の対立が爆発し、革命が起こる
→マルクスは共産主義をゴールと予想(現実には最適解では無さそうだが)
グローバル化により更に資本主義は拡大していくけれど、いつかは崩壊するのも見えているので、どう生きるのかはよく考えないといけないですね。
不払労働という考え方は参考になりました。自分の労働の適正価格を知ることも大切だなと。
印象に残ったフレーズ
「労働者は労働時間より、得られる賃金に関心があるので、いくら働いたかより、いくら労賃を得たかにのみ関心を示す。
労働者は、実際に働いた労働の量より、労賃が少ないことには関心を持たないのが現実なのだ」
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【書籍】自分の時間(アーノルド・ベネット)
オススメ度:★★★☆☆☆☆☆☆☆(3/10)
時間は実に不思議な貴重品である
元々時間は何よりも大切にすべきと考えていたので眼から鱗とまではいかなかったけども、ためになるエッセンスもありました。
2時間くらいあれば読めるので、時間がなぜ大切なのか手短に理解したい方にはとても良書だと思います。
・時間は万人に対して等しい価値を持つ
・週に7時間半、時間を確保して何かに集中して打ち込むべし(小説よりは詩が望ましい)
【気に入ったフレーズ】
「殉教者はみな幸福な人間なのである。彼らの行為は自らの信条と一致していたのだから」
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