暮らしを豊かにするコンテンツ紹介

旅行、漫画、音楽、読書、映画、美術館、登山、仕事などについて実際に体験して感じたことを紹介します

【小説】津軽(太宰治)

オススメ度:★★★★★★★☆☆☆(7/10)

 

太宰治の自伝小説&紀行文

大人になり自身の故郷である津軽に数十年ぶりに訪問し、昔の知人を頼りに旅行していく様が描かれます。

 

昨年、津軽に旅行に行き、太宰の生家に訪問し、興味が湧いたので読みました。

実際に行ったところが描写されているのを読むのは楽しいです。

 

 

【ポイント】

太宰治が1番心身共に健康だった頃の作品。明るく前向きな描写も多いです。

 →根暗だがお調子者な太宰はうかれて色々と失敗します

 

・社会的に不適合かつ未熟な人間であることを自覚しているが治せない。

 →作中でも毎回反省するのですが、どうしても治すことができないのです。後年、このような気持ちとの折り合いをつけることができず自殺を重ねます。

 

・作中で心の友と呼べる人間のことを紹介するが、全て過去に自分の家に仕えた者たち。

 →太宰の人間としての社会性のなさ。過去に世話を焼いてくれた人しか友と呼べない孤独を垣間見ることができます。

 

【なぜ面白いのか】

・自分もダメ人間で共感できるから

・自分よりさらにダメな太宰の様子を見て安心できるから(自分より下がいるのだという安心感)

 

 

【本文の抜粋】

------------------

けれども私は、弘前市を説明するに当って、それだけでは、どうしても不服なのである。それゆえ、あれこれと年少の頃の記憶をたどり、何か一つ、弘前の面目を躍如たらしむるものを描写したかったのであるが、どれもこれも、たわいの無い思い出ばかりで、うまくゆかず、とうとう自分にも思いがけなかったひどい悪口など出て来て、作者自ら途方に暮れるばかりである。

------------------

全編を通じてこのような塩梅です。

上記は弘前市を自慢したいのだが、どうしてもケチをつけてしまう自分に落胆するさま

 

この文章を見て共感出来る人は楽しくすらすらと読めると思います(端的にいうと根暗な人)

 

太宰は社会に馴染めない、人間的に未熟だと思う人々の代弁者なのです。

 

恐らく人間失格とか斜陽を読んでから読むのが良い作品だと思いますが、太宰の人間性に共感できるならば、是非読んでおきたい作品だと思います。

 

【太宰の生家】

f:id:becr64:20200501192451j:image

【金木の町の一角】

f:id:becr64:20200501192333j:image