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【小説】宿敵(遠藤周作)

オススメ度:★★★★★★★★☆☆(8/10)

 

遠藤周作歴史小説

豊臣秀吉の近習、小西行長加藤清正の生涯に渡る対立を描いた作品。

【ポイント】

・弱い人間と強い人間との対比

 →小西行長加藤清正高山右近のような強い人間と弱い自身を比較し苦しみます

・弱い人間の美しさ(庶民的日本人の美しさ)

 →己の信仰も守れない弱い人間でも、心の底にある本物の意志には美しさを感じざるを得ない

朝鮮出兵を物語の中心に据えた珍しい作り

 →歴史ではさらっと流される朝鮮出兵について知識を深めることができます

 

 

 

弱い人間が持つ美しさを、強い人間との対比から写し出している作品だと感じました。

小西行長は武士でありながら戦下手、キリシタン大名でありながらも、棄教のおどしに屈する弱い男です。

しかし、弱く立派ではなくとも、面従腹背の姿勢を貫き、自身の意志に従って戦国末期を駆け抜けていきます。

 

遠藤作品の多くで見られる特徴ですが、弱い人間が苦しみ迷いながら、人生を歩みそして、虚しさ侘しさに辿り着く。この虚しさや侘しさが人生なのだ。美しい人間の姿なのだと気づく。

この構図が、弱く生きづらい日本人の私には非常に響くのです。

 

一貫した人間像を元に描かれる遠藤周作の作品群。是非手にとって読んでみてください。

 

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